みなとそふと
■□ 企画シナリオ タカヒロ インタビュー □■

――以前のきゃんでぃそふと時代との制作環境の違いはありましたか?
タカヒロ 前作まではフルで動くわけではないですが、30人くらいいたスタッフが今となっては自分入れて4人です。企画・シナリオ・広報・社長が自分。塗りは2人。スクリプター1人で、あとは外注ですね。必然的にひとりひとりの負担が大きくなりました。まさにひとりで3人ぐらい倒す気概でいかないといけなかったです。

――そうなると代わりがいないので、体調とか崩せませんよね。

タカヒロ 自分は結局一度も風邪ひかなかったんですけど、これは最後まで保たせてくれるような気がしますけどね。(■注1)

タカヒロ ただ原画・白猫参謀さん以下、力のある人たちが揃っています。信頼のおける外注さんの強力なサポートは本当に必要ですね。目立たないかもしれませんが、マニュアルやパケ作りに関しても昔から縁のある人にお願いしてかっちり仕上げてくれました。このへんは自分ではどうにもならない範疇ですので、すごく助かりました。

――事務所の間取りは?

タカヒロ 2DK60平米ぐらいですね。風呂付きで、洗濯は週二、三回自宅に帰ってやってました。そして衝撃の30アンペア(■注2)(笑)。

――増やさなかったんですか?

タカヒロ 入居時には増えるって聞いてたのですが、いざ入居したら増えないことが発覚して……社長として一番の過失でした(笑)。夏場とか大変でしたよ。電子レンジ付ける前には、クーラー消したりしてましたから。揃える家電も厳選して選びました。「どんな苦学生だよ!」って感じでしたね。冬場にスタッフが帰った後、毛布にくるまってシナリオ書いた時はキツかったです。

――ゲーム版ときわ荘みたいな感じですね。

タカヒロ 『ゲーム道』(笑)。食事もそうですね。近所のスーパーが21時以降に惣菜が安くなるんで、時間見計らって買いに行ったり(笑)。今となっては「あの時は面白かったよな」って言えるようになりました。

■□  実録!みなとそふと32時!  □■

――よく、今が人生で一番忙しいと言っておられましたが、実際一番忙しかった時期のことを教えてください。

タカヒロ 今年の1月かなぁ。あの時期は本当に死ぬかと思いました。

11:00〜15:00 来たメールの返信他、広報業務
15:00〜19:00 シナリオ執筆。
19:00〜24:00 絵や塗りの発注、スクリプトの番号ふり等、企画制作進行
0:00〜7:00税務経理等の社長業、それ以降シナリオ執筆。
8:00 就寝

この合間に入浴、食事、日によっては取材や音声収録、他社さんとの打ち合わせなどが入ってきます。ただ音の収録中は真剣勝負な場ではありますが、唯一の気分転換でもありますね。現場ではケータイを切らなくてはいけないので(笑)あと移動時間に寝れるのが嬉しかったです。ただ日によっては後日使用する台本を、そのまま手で持って行き、車内でより分ける作業などしなくてはいけない日もありました。 そんな感じの日々が続いたので、出演声優さんのインタビューの際に「収録時の思い出は?」という質問の時、某声優さんに「ライターさんがどんどんやつれていくのが痛々しかったです」とか言われるんですね(笑)しょうがないです。

――では制作時の一番のピンチを教えてください。

タカヒロ 2月のノートPCの故障でしょうか。使用しすぎで基盤が焼き切れたのが原因でした。ハードディスクは無事だったのですが、週一で行っているバックアップの直前の作業データが入ったPCを修理で2週間手放すはめになって、その間は代用PCで大変でした。

――お仲間であるスタッフの皆さんについてお聞かせ下さい。

タカヒロ ひとりひとりが、進行を守ってやってくれるクオリティの高いスタッフなので、信頼して仕事ができました。あとは元の会社を辞めた人たちが、いろんな所で手を貸してくれましたね。本当に感謝しています。

(6/29更新分に続く)


注釈

(■注1)マスターアップのその週末にタカヒロ氏は大風邪をひき、楽しみだった自宅でのゲームも、新作ゲームのロケーションもできなくなってしまった。まさかこの時のインタビューがフラグだったとは。

(■注2) 30アンペア 基本的な使用電気量の概算として、テレビ1.2、冷蔵庫1.4、照明1.0、エアコン10、ドライアー12、電子レンジ12、電気カーペット8、これに4人分のPC分の足し算の総量が30を超えると、ブレーカーが落ちて、ゲーム制作に深刻なダメージを与える事態が発生する。