■   『森羅様=ハマーン様!?』   ■

――これまでに影響を受けた作品、作家、あるいはキャラクターはいらっしゃいますか?

タカヒロ 自分はアニメやマンガで育ってるんですよ。作品の傾向的にもビジュアルや声をよく使うんで、そこら辺がメインになるんですよね。だから昔の『ジョジョ』や『ドラゴンボール』がやっていた黄金期のジャンプと、自分が勝手に黄金期だと思ってるんですけど『らんま1/2』、『帯をギュッとね!』、『GS美神』、『うしおととら』がやっていた頃のサンデー、この2つですね。特にサンデーでのドタバタ系はかなり自分の根底にあると思います。時々レビューサイトとか見ると「タカヒロ作品はる〜みっく臭い」と言われるんですけど、意識はしてないけどやっぱり影響受けてるんでしょうね。それ以外だと『アークザラッド2』とか『サガ フロンティア』とか『ファイナルファンタジーZ』とかキャラクターの個性を大事にしてたRPGが凄く好きで、敵だろうが脇役だろうが個性が立ってるというのは凄く重要なんだというのはそこから学びましたね。特に『FFZ』は神羅カンパニーのタークスとかキャラ立ってたんで。今でも人気あるんでやっぱり間違ってなかったんだなって。あと作風とは違うんですけど黒い話好きなんで、太宰とかも好きだったりします。

るーす 初めて聞いたよそんなの。今日のためのネタでしょ(笑)?

タカヒロ 本当だってば。中二病っていうんですか、染まりやすい時期に読んだせいもあるかもしれないけど(笑)。笑いと暗い話って実は紙一重なところもあると思うんで。

るーす あー、なんとなくわかるかも。

タカヒロ キャラクターについては、初めに2次元に女性を感じたのは『ちびまる子ちゃん』のお姉ちゃんなんで(笑)。「こんなお姉ちゃんいたらいいな」って。それからハマーンとか……。

丸戸 ハマーンってお姉ちゃんなんですか?

タカヒロ まあ20才ですからね。でもハマーンはいわゆる上司、主ってイメージですね。だから『きみある』の原点はそこかもしれません。森羅なんかはマント付けてますしね、あの辺はモロに影響受けてます。

――るーすさんの場合はいかがですか?

るーす 影響を受けた作品っていうとやっぱり芝居になっちゃうのかな。第三舞台(■注釈)の作品は大体面白かったですね。あとは山田詠美の作品には中二病で凄くハマって。それとマンガだと『ブラックジャック』。これとか『ゴルゴ13』とか主人公がメチャクチャ強くて周りの人が成長するというようなそんな話が好きですね。

タカヒロ 『車輪の国、向日葵の少女』(■注釈)なんかはそういう傾向があるよね。

るーす 『ダイの大冒険』もポップが成長するじゃないですか。ああいうのが好きなんですよ。他に好きな作家というと、海外のミステリ作家でシェイマス・スミス(■注釈)とか好きなんですけどマニアック過ぎですかね? 日本だと『青の炎』の貴志祐介さんとか好きですね。

■   『ド修羅場属性のルーツ』   ■

――で丸戸さんお願いします。

丸戸 僕は年代古いんで70年代、80年代のドラマ……、例えば鎌田敏夫の『男女7人夏物語』や『秋物語』の会話の掛け合いには大きく影響を受けてます。あと中二病の頃は原作から映画・ドラマまで全部追うような横溝正史フリークで、ドロドロした話は今でも好きですね。で、大学時代から急に短編の方に嗜好がシフトして、星新一や阿刀田高といった短くオチをつける作品を読んでました。今でも場面ごとにオチをつけて、その集合体としてシナリオを作っていくのはその辺りからの影響ですかね。エロゲ作家としては僕はやっぱり蛭田昌人さん(■注釈)をずっと尊敬してます。だから主人公の性格なんかは結構影響受けてるかなっていうのはありますね。

――『この青空に約束を―』(■注釈)なんかはそういう印象ですよね。他に何か影響を受けた作品はありますか?

丸戸 今回の読者プレゼントに選んだ『海がきこえる』ですか。あれは「アニメージュ」の連載当時から追ってハマってました。あとは『きまぐれオレンジロード』(■注釈)。毎回ストーリー展開にイライラしながらも絵に惹かれて毎週読んでました。実はあの作品の劇場版が僕の修羅場属性の目覚めなんです(笑)。『あの日にかえりたい』ってやつでアニメが終わってから1年くらい経ってやったのかな? 凄いんですよ、超能力も何も出てこずに恭介がひかるをこっぴどく振るだけの話で。アイスを差し入れに持ってきたひかるを、恭介が無視して外に行っちゃって、帰ってきたらドロドロに溶けたアイスを持ってひかるが立っているという名シーンが……。要するにアニメ版『SHUFFLE!』における空鍋ですか(笑)。ド修羅場大好きですね〜。さっきタカヒロさんも言ってましたけどコメディと黒いのは表裏一体だと思います。


(次回更新続く 6/15更新予定)
【注釈】

■第三舞台
鴻上尚史主宰の劇団。軽妙な台詞のやり取り等で人気を博すが、現在は休止中。代表作に『天使は瞳を閉じて』。

■『車輪の国、向日葵の少女』
ブランド名:あかべぇそふとつぅ
発売年月:2005年11月25日
シナリオ:るーすぼーい
原画:有葉
るーすぼーいさんの商業デビュー作。罪に対して特殊な「義務」を科せられる架空の国を舞台とした作品。巧みな伏線、ユーザーの想像を上回るどんでん返しの展開、各章の最後に待つ感動シーンなどが熱い支持を集めた。

■シェイマス・スミス
『Mr.クイン』『わが名はレッド』等を手がけたミステリ作家。様々なトラップを用いて相手を破滅させる頭脳犯罪を主な題材としている。

■蛭田昌人
90年代を代表する美少女ゲームクリエイターの1人。フェアリーテール(現F&C)で活躍後、エルフを立ち上げた。『同級生』シリーズなど、後の作品に与えた影響は計り知れない。

■『この青空に約束を―』
ブランド名:戯画
発売年月:2006年3月31日
シナリオ:丸戸史明 with 企画屋
原画:ねこにゃん
シナリオ丸戸史明、原画ねこにゃんのいわゆる「まるねこコンビ」第3弾。豊富なパロディ、軽快な会話、そしてパッケージヒロインより目立つ裏ヒロインと3拍子揃った(?)作品。『この青』ないし『青空』と呼ぶのが丸戸流。

■『きまぐれオレンジロード』
1984〜87年に週刊少年ジャンプで連載された、まつもと泉によるマンガ。87年からはアニメも放送された。